「中古マンション購入完全ガイド」連載中!

引越しとメンテナンスを考えた家庭用エアコンの選び方

エアコンの選び方

家庭用エアコンはたくさんあるけれど、どうやって選べば良いかな。
各社の機能がたくさんありすぎて困っています。誰か教えてー!

こうしたことを思っている人多いのでは? 建築家目線で、家庭用エアコンの選び方を伝授します。

本記事の内容


機能、メンテナンス、移設、電気代を考えてエアコンの選ぶ最適な方法。


✔POINT

最近の家造りで大事なのは、デザインと間取り(建築界では、平面設計といいます)はもちろんですが、それにも増して重要なのは、設備です。建築の資格には、一級建築士と二級建築士がありますがもう少し専門的な資格として、一級建築士になった人だけが取得することができる設備設計一級建築士という資格があります。

専門資格なので、建築関係者しか知らない資格ですね。この資格は、階数が3階以上で延床が5,000平米以上の建物には必ず一人置かなくてはいけないのです。


住宅にはこの資格は関係ないですが、設備が重要というのは全く同じです。昔の家は、外気のコントロールをしっかりして(それは今もそうですが)、快適な空気環境を作り出していました。今は、その空気のコントロールに設備関係が重要な位置を占めています。


それは、みなさんも実感しているように夏の気温が昔と比べて暑すぎるからです。


どんなに空気の循環を作っても、熱い空気を回すだけになってしまうのが今の外気環境なのです。なので、エアコンによって快適な居住空間を作って上げる必要が出てきたのです!


それでは、どれがいいのということを解説しますね!>

目次

  1. 【機能】基本エアコンは家庭用で十分
  2. 【メンテ】メンテナンスがしやすい機種を選ぶ(通常時・カビ取り時)
  3. 【移設】移設がしやすい機種を選ぶ
  4. 【電気代】家庭用の100Vも200Vも電気代は変わらない
  5. おすすめ機種

1.【機能】基本エアコンは家庭用で十分

家庭用、業務用の違いは出力の大きさ

家庭用エアコンと業務用エアコンの違いはもちろんあります。

業務用のエアコンは、基本的には大規模な施設、公共施設、会社施設、教育施設などに使われます。業務用の種類としては以下の3タイプに分けられます。

  1. 建物に配管を予め行うビルドインタイプ・ダクトタイプ
  2. ビルトインタイプ・ダクトタイプで出力が22kw以下のもの
  3. 天井埋め込みタイプ、壁掛けタイプ、床置きタイプ、天吊りタイプ

1のタイプは、躯体の中や設備配管を予め行う大規模なビルなどに使用するタイプです。2も1ほどではないですが、設計時点でダクト配管を行うタイプですね。中規模タイプとしましょう。これらの場合、室外機は屋上にまとめて設置されることも多いです。1と2は家庭用ではありませんので、ここでは考慮する必要がありません。

3のタイプは、小規模ビル、事務所に利用するものであり、家庭にも十分に使える機種はあります。業務用と家庭用エアコンの主な違いは以下の2点です。


  • 大出力であること
    • 家庭用は5kwぐらいまでが通常
    • 業務用は5kw〜150kw
  • 電源方式
    • 家庭用は、単相の100Vと200Vを使用
    • 業務用は、小出力の場合は(単相200V)、中〜大出力は(三相200V)を選択


上述の3のタイプのうち、業務用の2.3馬力 P56型と言われる大体30〜40平米向けのものに関しては、単相を選べることもあり家庭用にも使いやすいですね。


業務用の2.3馬力 P56型の特徴

  • 適用面積
    • 事務所33~49㎡
    • 店舗24~36㎡
    • 喫茶・美容室19~24㎡
    • 飲食店15~24㎡
  • 室外機と室内機の比率 1対1


しかし、機能的には大きく変わらないため、この大きさであれば家庭用エアコンでも十分です。

業務用のほうが長持ちするわけではない

上記した3つのタイプ別で見ていきましょう。3タイプ別の耐用年数は、以下のとおりです。

  1. ビルドインタイプ・ダクトタイプ → 15年
  2. 上記で出力22kw以下 → 13年
  3. 天井埋込み、壁掛、床置、天吊りタイプ → 6年

3のタイプに関しては「えっ!6年なの??」って思うかもしれません。これは実情とは違います!それは、耐用年数とは経理処理の減価償却と紐付いているからです。企業は、買ったものを経費で落とすことで利益を圧縮できます。しかし、高額なエアコンは一括で経費で落とすことはできません。「エアコンは長く使うでしょ!だから、按分しましょうね!」という税務署の指示があります。ということで、上記の3のタイプ(家庭用にも使えるタイプ)は6年間で按分です。これが耐用年数です。

実際の寿命はもっと長いです!業務用は使用方法(毎日24時間年中無休など)によって違うため一概には言えませんが、10年経つとそろそろおかしくなる機種が増えてきます。実際には10〜15年程度です。

家庭用エアコンの耐用年数は、メーカによって修理期間が設けられておりその年数が耐用年数に当たります。

メーカー別修理受付年数

  • パナソニック 10年
  • 三菱 10年
  • シャープ 9年

これは、業務用のエアコンの耐用年数よりは長いです。より実情に沿ってみると内閣府による統計「2017年 消費者動向調査」によると、

  • エアコンの平均寿命 13.6年

という結果が出ています。エアコンの寿命は、業務用、家庭用共にそれほど大きな差はありません。

用途によっては、業務用を選択する選択肢もあり!

デザイン上、天井埋込み型が良い場合もあります。一般的には、天井裏に400-500mm程度の空間が必要です。これをクリヤーできれば、業務用を選択することで、スッキリしたデザインを採用することもできます。

また、犬や猫などの動物がいるため、年中無休で長時間の連続運転が必要(くくなくとも夏の3−4ヶ月、冬の3−4ヶ月は連続運転)などの要望がある場合は、業務用の選択肢も考慮するほうが良いです!

メーカーが違っても基本機能は変わらない

各会社によって、差別化を図るため様々な付加的な機能がついています。これをどう考えるかですが、私は基本機能をクリアーできれば良いとしています。基本機能は

  • 冷房
  • 除湿
  • 暖房
  • 風量調整(お休みモードの最弱風)
  • 風量調整(パワフルモード)
  • おやすみ機能=自動電源OFF機能

どうでしょう?これ以外に普段に使う機能はありますか?最初は物珍しくて使っていても、実は常用する機能はあまりないのではないかと思います。上記の基本機能ならば、どんなメーカーの機種でものほぼ備わっている機能です。メーカーによって基本機能は大きく変わりません。あと、私は

  • お掃除機能
  • 空気清浄機能

は必要ないと考えます。その理由は、以下のメンテナンスのところで説明しますね。

2.メンテナンスがしやすい機種を選ぶ(通常時・カビ取り時)

簡単な週一回の定期清掃は欠かせない!定期清掃がしやすい機種を選ぶ。

まず、エアコンの寿命を伸ばすのに重要なのは、日々のメンテナンスです。エアコンの前面には空気の取り込み口がありますよね。ここは、ホコリが大量にたまります。メーカーの説明書には、1週間に1回は掃除をしてくださいと明記されている場所です。

ここは、こまめにフィルターを掃除する必要があります。フィルターにホコリが大量にたまると、湿気で固まって空気の取り込みがスムーズに出来なくなり、エアコンのモータに負荷がかかるようになります。これがエアコンの寿命を縮める原因になります。

フィルターお掃除付きなら、日々のメンテナンスはいらないのか?

そんなことは、ありません。お掃除付きのエアコンを見てもらうとわかりますが、お掃除機能はエアコンの上部についています。エアコンの利用終了後にブラシが動いて、フィルターを掃除します。そこで、掃除されるのは上部のフィルターのみです。前面部分は完全には掃除されないためホコリが溜まってしまいます。やはり、日々のメンテナンスは必要なのです。

メンテナンスが難しいのは、業務用ですね。業務用のフィルター交換は、通常企業の場合は専門業者が行うので、会社で交換することはほとんど無いですよね。特に天井埋込み型は、家庭用エアコンと比べると通常メンテナンスにがやりにくいです。

この点を考えると、やはり家庭用エアコンのメリットはあるでしょう!

1年に1回内部洗浄(特にカビ取り掃除)は欠かせない

次に必要なメンテナンスが、エアコンの内部洗浄です。これをやりやすい機種を選ぶことが必要です。

内部洗浄がなぜ必要なのか?

エアコンの内部洗浄は絶対に必要です。私のクライアントにもエアコンの定期洗浄をおすすめしています。

それは、なぜかというと【カビ対策】です。

エアコンは使用時に冷やされた空気の水分がエアコン内部にたまります。その水分は、ドレンホースを中を通って外部に排出されますが、残った水分がカビの原因となります。

お風呂を締め切ったまま夏を過ごしたら、カビだらけになりますよね。基本的にエアコンは、この状態に近いです。そのため、1年間使用したエアコン内部には多くのカビが溜まっています。

これを洗浄するために、完全な分解洗浄が必要となります。カビの完全除去には、分解洗浄まで必要なので、これは3年に1回はやってほしいです。これによって、大きく寿命が伸びますし、重要なのは清浄な空気が常に排出されることです。カビのついたエアコンからの空気は、気持ち悪いですよね。

この洗浄メンテナンスのしやすさを考慮すると

  • お掃除機能は、分解洗浄が難しい(お金がかかる)ため不可
  • 空気清浄機能は、カビ掃除を行わない場合は清浄機能が意味をなさない

という結果になります。 

洗浄に関しては、二種類の方法があります

  • エアコンの引き取りによる分解洗浄 おすすめ3年に1回
  • 家の中で行う業者専門洗浄 おすすめ1年に1回

分解洗浄の方が高額ですが、完全にカビを除去できます。これは、最も安価なところで以下の値段です。

  • 壁掛けタイプ(家庭用) 20000円〜
  • 天井埋め込みタイプ(業務用) 35000円〜

プロの洗浄は必須

しかし、安ければよいというわけではなく、健康に直結するところは、財布の紐を緩めて、しっかりとプロの洗浄を頼むのをおすすめします。


よって、洗浄メンテナンスについても余計な機能のない、基本機能のみの家庭用壁掛けタイプをおすすめします。

3.【移設】移設がしやすい機種を選ぶ

移設のタイミングは突然やってきます。

  • 引っ越し
  • エアコンの故障

などですね。そのときに高額なエアコンの移設に支障がないような機種を選んでおく必要があります。エアコンを買い換えると10〜20万円がすぐに吹っ飛んでいってしまいます。移設をあらかじめ考えて、エアコン選びをしましょう!いきなり結論です。

結論:シンプルなエアコンなら移設が容易

つまり、以下の基本機能のみのシンプルエアコンなら、引越し先がどんな場所であっても容易に移設することができます。

  • 冷房
  • 除湿
  • 暖房
  • 風量調整(お休みモードの最弱風)
  • 風量調整(パワフルモード)
  • おやすみ機能=自動電源OFF機能

自動お掃除付きは便利そう!だけど移設とメンテを考慮すると完全に不可です

自動お掃除機能には、通常とは違う配管が必要となります。エアコンは、専門業者が行うので詳しくは知らなくて当たり前です。エアコンの配管を見てみると、通常は一つの大きなチューブを見ることができると思います。この中には、合計3種類(計4本)の配管が入っています。

  • 冷媒管2本
  • ドレンホース
  • 室外機の電源ケーブル

お掃除機能付きには、これにさらにホコリ排出用のチューブが必要になります。これがなかなか取り回しに制限がありまして、エアコンから室外機までの長さによっては取り付けができないものもあります。或いは、天井を通すとダメなど。よって、移設や取り付け場所に制限が出るのは避けたいので、私はあまりおすすめしていません。

あとは、先程書きましたが、特に分解洗浄のメンテナンスですね。お掃除機能付きの機種は、構造が複雑になるため費用が高額になることが多いです。また、お掃除機機能が壊れてしまうこともあります。そうすると、本来お掃除機能がやってくれるはずだった場所まで、日々のメンテナンスでやらなくてはならなくなります。それでは、本末転倒です!

天井裏の隠蔽配管のときにも、シンプルなエアコンであれは移設が容易!

これは穴場の問題ですが、隠蔽配管といって、天井に配管を通してエアコンの配管を見えないようにする配管方法があります。とくにデザイン上、エアコンの配管はちょっと見た目が嫌だ!という人も多いのでは。そういったときに採用するのが隠蔽配管です。

この隠蔽配管ではホコリ排出用のケーブルを取り回しすることができません。お掃除機能付きエアコンはそもそも、隠蔽配管に対応していないのです。そのため、購入後のリノベーションの段階で隠蔽配管に変えたいとしてもできません。

実は私も、お掃除機機能付きエアコンにしていて、引越し先の隠蔽型配管に対応できず、泣く泣く廃棄したことがあります。

お掃除機能付きエアコンはフレキシブルな利用に欠けるので、私がおすすめしない理由となります。以上の理由から、シンプル機能のエアコンが一番なのです。

4.【電気代】家庭用の100Vも200Vも電気代は変わらない

家庭用エアコンには、100V用と200V用のものがあります。14畳以上の部屋では、かならずパワフルな出力に有効な200V用のエアコンを選びましょう。

出力(W)が同じなら電気代は変わらない

まず、理科の公式を思い出してください。

  •  V(ボルト:電圧)× A(アンペア:電流) = W(ワット:出力)

でした。例えば、5kW(5000W)の出力があるエアコンを使ったとしましょう。その場合は、

  •  100Vの場合 100V × 5A = 5000W
  •  200Vの場合 200V × 2.5A = 5000W

の式が成り立ちます。出力(W)が同じなら、アンペア(A)が変わります。電気代は使用しているWh(一時間あたりのW数)で計算されるので、時間(h)単位に使用している量が変わらなければ、電気代は増えません。

次に調べてほしいのは、電気会社との契約です。マンションや一戸建てかによっても違いますが、電気会社との契約は30Aとか50Aとか、アンペア単位で契約しているはずです。

そうすると、200Vだと、エアコン利用時に使用するアンペア数が変わりますよね。少ないアンペアで大きな出力が得られるようになります。つまり、アンペアに余裕が出ます。電流をジャンジャン流さなくても出力が得られるので、エアコンに余裕が生まれるのです。

つまり、200Vの方が大きな出力を得るのにエアコンの余裕があるということです。最大出力が同じであっても、実はここに大きな差があるのです。

よって、選べるならは200Vの電源のある機種をおすすめします!

5.おすすめ機種

  1. エアコンは家庭用で十分ですが、「デザイン性」や「ペットがいる」などのよっては業務用を選びましょう!
  2. メンテナンスと移設を考慮して、基本機能のみの機種を選びましょう → お掃除機能などのオプション機能はいらない!
  3. 電源は、可能であれば200Vの機種を選ぼう!

以上を踏まえて、おすすめ機種です。ご参考までにどうぞ。

6畳用 100V

10畳用 100V

14畳用 200V

20畳用 200V

最後に


今回は、エアコンの選び方について、建築家の目線からの提案でした。結局は、普通じゃん!という結論ですよね。機能的にも性能は似たりよったりですし、メンテナンスを考えても、基本機能のみのシンプル・エアコンがやっぱり一番なんです。安くて、何かあったときも安心なエアコンを選んでくださいね。


こんな記事も読まれています