建築家リカルド・レゴレッタは、メキシコの首都メキシコシティ出身の建築家です。色も空間も、メキシコ特有の文化的素養がにじみ出ているように感じます。
本記事の内容
本記事では、建築家リカルド・レゴレッタの略歴、代表作、書籍を紹介したいと思います。建築家リカルド・レゴレッタは、メキシコの近代を代表する建築家です。そのレゴレッタの建築は軽やかというよりもずっしり重いのですが、特徴的な色がその重さを緩和しているように感じます。空間性は、まるで家でくつろいでいるような、親近感を感じる空間です。カミノ・レアル・ホテル・ポランコの客室に向かうまでの劇的な空間が忘れられません。
目次
- 建築家 リカルド・レゴレッタの略歴
- 建築家 リカルド・レゴレッタの代表作 紹介
- 1968 カミノ・レアル・ホテル・ポランコ
- 1991 モンテレイ現代美術館
- 1995 サン・アントニオ公共図書館
- 建築家 リカルド・レゴレッタの書籍 紹介
- まとめ
1.建築家 リカルド・レゴレッタの略歴
建築家リカルド・レゴレッタは、1931年にメキシコシティで生まれました。1952年にメキシコ国立自治大学の国立建築学校で建築の学位を取得し、1960年までホセ・ビジャグラン・ガルシアの事務所に勤務します。その後、ノセ・カストロとカルロス・バルガスと共同で事務所を設立します。
リカルド・レゴレッタは国際的にも有名なメキシコの建築家です。レゴレッタの建築作品の特徴は、プロポーション、エレメンタルなスペースの確保、メキシコ特有の色、構造と建築の力強さといえます。メキシコという地域的な特色と、その文化的環境の現代的な解釈が、建築に投影されています。
リカルド・レゴレッタはメキシコや国際的な才能のある画家や彫刻家の芸術作品を、建築に取り入れています。それは、ルフィーノ・タマヨ、マティアス・ゲーリッツ、アレクサンダー・カルダー、イサム・ノグチ、ファン・ソリアーノ、ペドロ・フリーデベルク、ホセ・ルイス・コバルビアス、ビセンテ・ロホ、ハビエル・マリンなどです。
メキシコシティにあるカミノ・レアル・ホテル・ポランコは、リカルド・レゴレッタが複数設計を担当するカミノ・レアル・ホテルチェーンの最初のものです。建築家のルイス・バラガンもこのホテルのプロジェクトに協力しています。このホテルは、20世紀の貴重な芸術作品の宝庫でもあります。まず玄関のパティオでは、イサムノグチによる「永遠の動きの噴水」でホテルの訪問者を歓迎します。また、このカミノ・レアル・ホテルのマークと金色の絵画は、彫刻家であり画家でもあるマティアス・ゲーリッツによります。ホテルのロビーでは、アレキサンダー・カルダーの鋼の彫刻があり、またルフィーノ・タマヨが、60平方メートルという巨大な壁に灰色と紫の色合いを用いて描いています。オアハカの画家ロドルフォ・モラレスは、カミノ・レアルホテルのために、2つの作品を作成しました。サカテカ出身のペドロ・コロネルは、鮮やかなサークルの抽象的な作品をつくり、ホセ・ルイス・コバルビアスがレストランの静物画を描いています。
国外での建築家の最初のプロジェクトは、リカルド・モンタルバンと妻のジョージアナのために、ハリウッドの丘の上に住宅を設計しました。このプロジェクトの成功により、彼のキャリアは国際的に広がっていきます。
リカルド・レゴレッタは、2011年12月30日に80歳で亡くなりました。
2.建築家 リカルド・レゴレッタの代表作 紹介
1968 カミノ・レアル・ホテル・ポランコ
チャプルテペック公園に隣接するカミノ・レアル・ホテルは、1968年に竣工しました。ホテルの最初のアイデアは、従来型で目立たないモダンな高層ビルの複合体でした。しかし、リカルド・レゴレッタはホテルのデザインに、メキシコの家を呼び起こすような本当のメキシコ文化の感覚を吹き込むことにしました。メキシコシティはたびたび地震に見舞われる場所です。耐力壁とメキシコシティの建物への地震の影響の研究により、当時は5階建てが合理的な最大高さとの回答でした。この高さから、リカルド・レゴレッタは必要な数の客室とパブリックスペース、それらの間のオープンスペースを勘案し、都市環境と統合を目指します。
ホテルは、3つ主要な通りの喧騒から保護し、4番目の側にある小さなショッピング通りとつながっています。つまり、ホテルは滞在者にプライバシーと安全を提供しています。一方で、木々で縁取られた明るい黄色のアーケードは、内部の公共の販売店エリアと通りを結んでいます。メインウォールの正面の壁は、衝撃的なピンク色のスクリーンで、訪問者はこのスクリーンを通って、噴水のみえるエントランス・カーポートに入ります。
このホテルには「歩く喜び」があり、またそれを促すしかけがあります。ホテルの滞在者は客室までかなりの距離を歩くようにデザインされています。その歩行空間は、光、素材、色を操作することで、高級感を演出し、満足感を増幅するようにデザインされています。そしてメキシコ固有の建築で一般的な素材である粗い漆喰壁が、インテリアに品格を与えています。とくにスーペリアクラスの客室は中庭、専用パティオ、庭園、または屋上テラスに面しています。
1991 モンテレイ現代美術館
モンテレー現代美術館(MARCO)も、その基本構造は伝統的なメキシコの家な計画に基づいて都市景観に統合されるように設計されています。
まず、設計の基本は、ギャラリーにアクセスできるアーケードに囲まれた中央のパティオから始まりました。伝統的な家も、まずは中心にパティオを有して、そこから各部屋にアクセスできる形です。
美術館へのアクセス(歩行者&駐車場)は南東の小さな広場を通って行われ、ファン・ソリアーノが作成した巨大な鳩が迎えてくれます。この広場から、エントランスホールに入ります。エントランスホールでは、内部の展示スペースの他にも、カフェテリア、ショップへアクセスできます。
ギャラリーの中心的な要素であり、かつコンサートや集会などに使用される大きな中庭空間は魅力的です。日常的には約3 cmの水層で覆われており、定期的な水の入れ替えシーンは迫力があり、内部環境を活気づけています。
あらゆる展示は、プロポーション、形状、高さの異なるギャラリーで適切なものを選んで行われます。そのため戦略的に配置された窓は展示を邪魔することなく、また訪問者を街や中庭に導いています。
1995 サン・アントニオ公共図書館
サンアントニオ公共図書館(SAPL)は、テキサス州サンアントニオ市にあり1995年に竣工しました。
22,000 m2の6階建ての建物で、鮮やかな色の壁が印象的です。リカルド・レゴレッタは、1991年7月に市が開催したデザインコンペで選出されました。特徴としては、多層の明るい黄色で塗られたアトリウムと、屋外の読書室として使用することを目的とした中庭、そして噴水のある屋外広場です。
レゴレッタは、「図書館というイメージが課しているという概念を打ち破りたかった。」とのべています。またこの図書館にはデイル・チフーリ制作の「フィエスタ・タワー」というガラスの彫刻があり圧巻です。
3.建築家 リカルド・レゴレッタの書籍 紹介
Ricardo Legorreta, Architect
リカルド・レゴレッタによるメキシコ、テキサス、カリフォルニアの主要25点を写真と論考で紹介しています。写真も解説も充実しているので、入門書として最適です!!
Ricardo Legorreta is the most renowned architect working in Mexico today. His signature use of brilliant saturated reds, purples, and yellows, thick-textured walls of stucco and plaster, and mysterious, light-filled spaces has earned him a devoted following and a distinguished international reputation. Legorreta’s highly personal aesthetic combines a deep appreciation of traditional Mexican architectural elements and culture with a thoroughly modern sense of design that reflects his early training with the Mexican master Luis Barragán.
This long-awaited monograph showcases 25 of the architect’s most recent and celebrated projects in Mexico, Texas, and California, with stunning color photography throughout and special focus on nine private houses.
Among the projects shown here are vacation houses in Mexico and in Rancho Santa Fe and Sonoma County, California; the house of actor Ricardo Montalbán and the renowned Greenberg House in Los Angeles; the new Metropolitan Cathedral in Managua, Nicaragua; El Papalote Children’s Museum and the City of the Arts, both in Mexico City; the new San Antonio Main Library in Texas; several high-profile buildings in Monterrey, Mexico, including an office complex designed to house an impressive collection of Mexican art and sculpture; and the famous Camino Real hotels in Mexico City and Ixtapa.
An introduction and an interview with Legorreta, a list of projects, and a bibliography provide background and insight into this architect’s prolific career.
Amazonより
4.まとめ
建築家リカルド・レゴレッタは、メキシコの近代を代表する建築家です。公共物には、建築とともに大型の芸術作品が併設されてことが多いです。それにより、「ホテル」の内部は、宿泊施設だけでなく社交場であり、図書館の庭は公共に開放されており、さまざまな人が行き交うことになります。こうした、場の空間をつくることができるのが、リカルド・レゴレッタの特徴です。