建築家 吉阪隆正は、ル・コルビュジエに師事した3人の日本人(前川國男、坂倉準三、吉阪隆正)の中で一番若く、ル・コルビュジエの晩年をよく知る建築家です。
帰国後の1953年から本格的に設計活動を開始し、吉阪研究室(後のU研究室)では、多くの建築家を育てました。
早稲田大学赤道アフリカ横断遠征隊、早大アラスカ・マッキンリー遠征隊長など、探検家というか登山家としての側面も持っていました。
1973年には日本建築学会の会長に就任しています。本当に人間的にも面白い建築家です。
というわけで、今回は吉阪隆正の執筆した本のご紹介です。
本記事の内容
本記事では、建築家 吉阪隆正が執筆した書籍【10選】を紹介します。絶版も多いので、現在手に入れられるものを中心に、ル・コルビュジエの【翻訳本】も入れておきます。
目次
- 乾燥なめくじ―生ひ立ちの記(吉阪隆正 著)
- 吉阪隆正対談集―住民時代 君は二十一世紀に何をしているか(吉阪隆正 著)
- 住生活の観察 (吉阪隆正集 2)(吉阪隆正 著)
- 環境と造形 (吉阪隆正集 5)(吉阪隆正 著)
- 建築の発想 (吉阪隆正集 7)(吉阪隆正 著)
- 住まいの原型 2 (SD選書 77)(吉阪隆正 編)
- 【翻訳】アテネ憲章 (SD選書 102)(吉阪隆正 翻訳)
- 【翻訳】建築をめざして (SD選書 21)(吉阪隆正 翻訳)
- 【翻訳】モデュロール 1&2(SD選書 111&112)(吉阪隆正 翻訳)
- 吉阪隆正の迷宮(2004吉阪隆正展実行委員会 編)
1. 乾燥なめくじ―生ひ立ちの記(吉阪隆正 著)
吉阪隆正が「かんそうなめくじ」という名前で、人類や文明について語っています。
「かんそうなめくじ??」ですよね。
なんていうか、発想力の違いが際立ちますね。
この本では、かの有名な吉阪隆正自邸について、吉阪隆正自身が自伝的にその変遷史を語っています。
また、吉阪隆正夫人や妹による回想もあるので、人間「吉阪隆正」を楽しめると思います。
■目次
・かんそうなめくじの弁 1966年 日本万博に期待する
五本目の脚/不信の逆手
・日本の都市・世界の都市
世界平和は相互理解から/私のヨーロッパ歴史解釈/文化人類学からの比較/住居形態からの比較/先進国日本
・かんそうなめくじの弁 1971年 月は西から東に向かう
五年目にまた/ツーテンジャックのルール/一次元の世界をつくる馬鹿/いのちのためのくらしの害/知恵を働かすほど困るようになる/一度にひとつしかできないこと/月は西から東に向かうこと
・大学と国際交流-個人的体験を通じて
親が国際交流の仕事に従事している時の子供の立場/留学生/遠征/招聘、交流/国際会議/建築の分野で/ツーリスト・ビューロー
・かんそうなめくじの弁 1976年 五本目の脚
変身/日出づる方を大切にせよ/科学は限定された世界像/知と別の友愛
・わが住まいの変遷史
誕生の前後/幼年期の頃/少年期頃のテリトリー/ジュネーブのお屋敷で/下宿時代/1945年5月25日焼失/同居から単居まで/もう一つの経験/「薩摩会館」での二年間/アルゼンチンでの二年間/百人町の改装と拡大/ボストンでの転機
・兄のこと 川久保よし子
・かんそうなめくじの妻 大いに語る 1982年 吉阪ふく
・あとがきにかわって 三宅豊彦
2. 吉阪隆正対談集―住民時代 君は二十一世紀に何をしているか(吉阪隆正 著)
吉阪隆正と10人の建築家との対談集です。
私が気になったのは、黒川雅之、石井和紘です。
この時代の建築家の個性の強さがとても出ていて、対談の建築家の選択も面白いですね。
■内容 キサデコールセミナーシリーズの第5巻。 建築家 吉阪隆正と10人の建築家との対談集。 主要目次: 1. 子供たちのために 仙田満+大竹康市+吉阪隆正 2. 水のはなし 山崎泰孝+黒沢隆+吉阪隆正 3. 皮膚感覚について 黒川雅之+長谷川逸子+吉阪隆正 4. 家について 藤本昌也+納賀雄嗣+吉阪隆正 5. 現代建築の誘導概念 石井和紘+石山修武+吉阪隆正
3. 住生活の観察 (吉阪隆正集 2)(吉阪隆正 著)
吉阪隆正の「1940年早稲田大学卒業論文」があるので、これが読みたくて紐解きました。
いろんなことに興味を持つことの大事さが伝わります。
前川國男、坂倉順三そして吉阪隆正は日本におけるル・コルビュジェの弟子の3人のうちの一人です 父親が外交官であったことから子供のころから海外生活が多く、グローバルな視点で建築をとらえる貴重なシリーズ本の一冊 1北支蒙彊に於ける住居の地理学的考察-1940年早稲田大学卒業論文 2自然環境と住居の形態-住居学汎論 解説 吉阪の想望と現代住居学の課題 地井昭夫著
4. 環境と造形 (吉阪隆正集 5)(吉阪隆正 著)
吉阪隆正が立ち上げた「有形学」の基礎となる論考があります。
民族学的差異論、発展段階論など社会科学的な視点もあり面白いですね!
吉阪以前に、造形文化の深層と深く関わりあう形で、「環境」が論じられることはなく、またアノニマスや生活主体の築きあげた「造形的環境」が、美学的・建築学的・生活学的考察の対象となることはなかった。本書では、これらの洞察から吉阪が「有形学」を構築するプロセスが読みとれるとともに、吉阪が図と文で論及する豊かな事例を学びとることができる。ここには、芸術様式史としての建築の理解や民族学的差異論、自然決定論、発展段階論などの諸論を超えて、人類の環境文化の構造的理解に迫るものがある。
5. 建築の発想 (吉阪隆正集 7)(吉阪隆正 著)
「ヴェニス・ビエンナーレ・日本館」、「アテネ・フランセ」、「大学セミナーハウス」など、吉阪隆正の代表作について語っています。
吉阪隆正の代表的建築に興味のある人は必見です。
1946年から1981年まで、吉阪隆正とU研究室によって創られた建築作品。「ヴェニス・ビエンナーレ・日本館」、「アテネ・フランセ」、「大学セミナーハウス」をはじめ17作品の写真・図版と、吉阪による自作解説を収録する。
6. 住まいの原型 2 (SD選書 77)(吉阪隆正 編)
こちらは、吉阪隆正の編集で、地域研究者の論考をまとめたものです。
「住まいの原型 1」は、泉精一という人類学者が編集をしていたので、その路線を引き継いています。
吉阪隆正の大学時代の師匠は今和次郎で、今和次郎は民俗学者だった(柳田國男と調査もしていた)ので、その影響もあるのかと思います。
本書では、モンゴル、フィリピン、台湾、エジプトなど、15の地域の住居をとりあげ、各執筆者の視点から、住居本来の有様を紹介。
7. 【翻訳】アテネ憲章 (SD選書 102)(吉阪隆正 翻訳)
有名なル・コルビュジエの「アテネ憲章」の和訳です。
「建築科の学生たちへの談話」として、「今日の言葉/建築科の学生諸君に/ごった返し/住居の建設/建築/研究のアトリエ」という簡単な論考を載せています。
「アテネ憲章」よりも付録の吉阪隆正の言葉が面白かったです。
機械文明下における都市計画の憲章として40年余を経た今日、その内容と精神は生き続いている。建築科の学生達への談話を併載。
■目次
・翻訳に当たって
・冒頭の言葉
・憲章のできるまで
・アテネ憲章
総則/都市の現状-危機と対策/結論
・建築科の学生たちへの談話
今日の言葉/建築科の学生諸君に/ごった返し/住居の建設/建築/研究のアトリエ
・訳者解説
アテネ憲章の推進力となったル・コルビュジェの働き/もう一つの観点(1)/もう一つの観点(2)
・訳者あとがき
8. 【翻訳】建築をめざして (SD選書 21)(吉阪隆正 翻訳)
ル・コルビュジエの「建築をめざして」の和訳です。
建築を目指す人の基本書として必見です。
読み継がれる建築の名著。
「住宅は住むための機械だ」
このあまりにも有名な言葉を含む本書は、ル・コルビュジエの都市・建築に対する新時代の到来を告げる宣言であり、その問題提起は都市・建築を学ぶ人々にとって今なお、刺激的で示唆的である。
9. 【翻訳】モデュロール 1&2(SD選書 111&112)(吉阪隆正 翻訳)
ル・コルビュジエの「モデュロール(黄金尺)」の和訳です。
この本は、ル・コルビュジエの自叙伝とも言えるものです。
ル・コルビュジエの生い立ち、考え方、生き方に興味のある人も楽しめると思います。
コルビュジエのモデュロール(黄金尺)は、「人間の建物」の尺度の基準として、彼が一生をかけて作り出したもので、本書は、一種の自叙伝といってよく、生い立ちや活動、迷いや確信をスリリングに綴った興味あふれる本である。
10. 吉阪隆正の迷宮(2004吉阪隆正展実行委員会 編)
こちらは、2004年に開催された吉阪隆正展のために作られた本です。
多くの建築家が「どのように吉阪隆正に影響されたのか」など内容もかなり豊富なので、吉阪隆正をさまざまな角度から知ることができます。
大勢の若者が参加した大学セミナー・ハウスの大きな油土模型を核にした展覧会、気鋭の建築家と評論家、歴史家を交えたシンポジウム、十夜にわたって10のテーマで32人が語り継いだ夜話、次世代の建築家によるビデオメッセージ。2004吉阪隆正展は、吉阪の活動の多方面に光が当てられた。本書に登場する多くの語り部のことばから、人間、建築、まち、都市、地球へと思考や行動を展開した吉阪の熱い想いが伝わってくる。
最後に
如何でしたか?今回は、建築家 吉阪隆正が執筆した本10選をご紹介しました。今回、吉阪隆正の本を調べてみると、かなりの本が絶版となっていて、中古市場にも出回っていないものも多いです。程度の良い本を見つけたら、手に入れておくと良いと思います。
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