建築家 黒川紀章は、愛知出身の現代建築家です。丹下健三研究室出身には、槇文彦、磯崎新、谷口吉生らがいます。丹下研究室出身はそうそうたるメンバーであることがよくわかります。
本記事の内容
本記事では、建築家 黒川紀章の略歴、代表作、書籍を紹介したいと思います。黒川紀章といえば、やはりメタボリズム運動が有名です。この時代の建築家は、思想と実作が密接に関係しています。またその思想は実に明快でわかりやすいのです。やはりこうした明快さこそ、社会に受け入れられる秘訣ですね。
目次
- 建築家 黒川紀章の略歴
- 建築家 黒川紀章の作品
- 中銀カプセルタワービル
- 六本木プリンスホテル
- 新国立美術館
- 建築家 黒川紀章の書籍 紹介
- まとめ
1.建築家 黒川紀章の略歴
黒川紀章は1934年(昭和9年)生まれ、愛知県出身です。
京都大学工学部建築学科在学中は西山卯三に師事していました。1957年に卒業した後、東京大学大学院へ進学し丹下健三研究室に入ります。東大在学中に「株式会社黒川紀章建築都市設計事務所」を設立します。早いですね!
丹下健三の門下生としては、槇文彦、磯崎新、谷口吉生らもいます。大御所ですね。
有名なのは大高正人、槇文彦、菊竹清訓らとメタボリズムを提唱したことです。こうした思想的な部分がこの時代の面白いところです。そして、建築という実際のものと思想がぶつかる時に、面白いものができます。
このメタボリズムの思想に基づいた作品に、中銀カプセルタワービルがあります。黒川紀章は海外のコンペの取得も多いので、海外にある作品も多いです。
驚いたのは2007年に東京都知事選挙と参院選に立候補したことです。確かに、日本の都市を変えいくには政治が一番かもしれません。そう、ちゃんとした思想を持った政治家であれば。。。
その後、参院選2ヵ月後に亡くなります。それも突然で驚きました。
2.建築家 黒川紀章の代表作 紹介
中銀カプセルタワービル
中銀カプセルタワービルは1972年に竣工しており、中身はかなり時代を先取りしています。
建築家 黒川紀章の初期代表作であり、メタボリズムの思想を具現した代表作です。部屋の独立性を保ち、部屋(カプセル)が交換可能というコンセプトです。この極めて特徴的な外観から、メタボリズムのデザインとして高く評価されています。
2006年に、DOCOMOMO JAPANに選定されています。
老朽化が進んでいるため、取り壊しや建て替えの議論も多ですが、まだ現役で使われている。こちらも早く見に行かないと、取り壊されるのは時間の問題のように思います。
六本木プリンスホテル
六本木プリンスホテルは、1984年に竣工し、2006年に取り壊されたので、建築の寿命はこんなにも短いものなのかと驚きます。
建物には、中心部に中庭があり、そこには曲線でデザインされた屋外温水プールがあります。外観は、正方形がモチーフになっていたので外観と内側の意匠の違いが特徴でした。
内側は総ガラス張りで、プールをどの部屋からも見下ろすことができました。また、プールの側面が透明アクリル板であったため、ロビーからプールで泳いでいる者を見ることができたそうです。見たかったですね!
また、ロビー横の階段の意匠もデザインが高くて有名でした。
六本木プリンスホテルの跡地
新国立美術館
国立新美術館は、2007年に竣工です。国立の美術館としては30年ぶりに新設されたので、久しぶりの大型の国立美術館です。
新国立美術館は、美術館独自のコレクションを持たないのが特徴です。それでは、その施設は美術館(ミュージアム)なの?という疑問があります。
英語では「ナショナルアートセンター・トウキョウ THE NATIONAL ART CENTER-TOKYO」となっています。展示ホールのような感じですね。設立目的にもあるように、展覧会の開催、情報公開、教育普及が目的の建物です。
これが黒川紀章設計の最後の美術館となりました。
3.建築家 黒川紀章の書籍 紹介
行動建築論―メタボリズムの美学
復刻版です。今読んでみても新鮮ですね!
[主な目次]「建築はなくなっても、思想は生きつづける。1960年代、世界に向けて発信した黒川メタボリズムがいまふたたび問いかける、生命(いのち)の建築と都市の生命(いのち)」(南條史生 森美術館館長、復刻版の帯から)。
SHOKOKUSHA Publishing
いま国内外で再評価が進むメタボリズムの名著の復刻版。黒川紀章33歳のときの著作。
第一章 新陳代謝する建築
第二章 運動の建築
第三章 メタボリズムの方法
第四章 現代建築と都市
4.まとめ
建築家 黒川紀章は、日本の戦後を代表する建築家であり、建築思想的な部分もその時代を特徴づけています。「行動建築論―メタボリズムの美学」を読み返してみると、建築は目的ではなく、思想を実践するための道具(ツール)であることを思い知らされます。快適な住まいを作るのは、その建築が目的ではなく、住まうことが目的ですからね。そうしたことを忘れている建築家も多いのではないでしょうか?