建築家 谷口吉生は、メディアにも建築雑誌にもあまり登場しない建築家です。作品主義の孤高の建築と言われています。そのストイックさは、モダニズムを追求した谷口吉生の建築にも表れているようです。
本記事の内容
本記事では、建築家 谷口吉生の略歴、代表作、書籍を紹介したいと思います。まさに日本のモダニズムを牽引した建築家の一人です。建築の洗練されたモダニズムは槇文彦と共通したものがありますが、谷口吉生の建築は直線や幾何学を多用しており、厳しくストイックな雰囲気を持っています。
目次
- 建築家 谷口吉生の略歴
- 建築家 谷口吉生の作品
- ニューヨーク近代美術館新館
- 法隆寺宝物館
- 猪熊弦一郎現代美術館
- 建築家 谷口吉生の書籍 紹介
- まとめ
1.建築家 谷口吉生の略歴
谷口吉生は1937年に東京で生まれました。父はモダニズムの建築家である谷口吉郎です。谷口吉生の建築を見ると、建築家となるべくして生まれてきたような気がします。日本建築学会賞作品賞を2度受賞(「資生堂アートハウス」と「東京都国立博物館法隆寺宝物館」)し、また吉田五十八賞や高松宮殿下記念世界文化賞などの建築賞も受賞しています。
しかし、海外の作品はニューヨーク近代美術館以外にはあまり知られておらず、海外へのメディア露出が少なかったせいか、海外の建築賞はあまりないようです。マスコミにも登場する機会は極めて少なく、作品主義の建築家といえるでしょう。
略歴
- 1960年 慶應義塾大学工学部機械工学科卒業
- 1964年 ハーバード大学建築学科大学院修了
- 1965年-1974年 東京大学都市工学科丹下健三研究室および丹下健三都市・建築研究所
- 1975年 計画・設計工房設立
- 1979年 谷口吉郎建築設計研究所所長
- 1983年 谷口建築設計研究所所長
- 2005年 第17回 高松宮殿下記念世界文化賞建築部門受賞
2.建築家 谷口吉生の代表作 紹介
ニューヨーク近代美術館新館
ニューヨーク近代美術館は、「MoMA」と呼ばれている有名な近代美術館です。ニューヨークを観光した人は、MoMAも行ったのではないでしょうか。
ここは、1939年に初期の建物が竣工し、その後1951年と1964年にフィリップ・ジョンソンによって増築されています。1983年にはシーザー・ペリによって、ガーデン・ウィングが増設されました。
こうした度重なる増築で、全体動線や展示室の繋がりに問題が発生し、新館の建築をすることで問題の解決を図りました。その国際コンペに谷口吉生の設計案が選ばれたのです。
日本の建築家が、MoMAの増築とは、とても誇らしくうれしいですね。2004年11月再オープンしています。ここは、本当に空間も、展示も、食事も全て良いです!
法隆寺宝物館
法隆寺からの献納品を保存展示するため、1964年(昭和39年)に開館したものです。現在の建物が谷口吉生の設計によります。1999年開館しました。
ちなみに同じ国立博物館内にある東洋館の設計は谷口吉郎。こちらも本家本元のモダニズムですね!でも、時代が違うので、使える素材が違う。谷口吉生はやはり現代建築です。
法隆寺宝物館自体は休館日以外は毎日公開されているので、上野公園に行ったら見てみましょう。
猪熊弦一郎現代美術館
丸亀市出身の猪熊弦一郎の作品展示と美術振興を目的とした建物です。1991年に竣工です。正統派のモダニズム建築ですし、谷口吉生とすぐにわかります。公共建築百選にも選ばれています。
香川県は見るべき建築がたくさんあります。例えば、丹下健三の香川県庁舎、イサム・ノグチの自邸アトリエなどもあります。
ぜひ香川県に行ったら、丸亀まで足を伸ばして見ましょう。
3.建築家 谷口吉生の書籍 紹介
私の履歴書-谷口吉生
谷口吉生の言葉を見るにはこれしかありません!メディアに出ない建築家が語った言葉です。
〈徹底した作品主義を貫く稀代の建築家による、初の自伝〉
〈世界的建築家が自身の作品、半生を雄弁に語る〉
葛西臨海水族園、豊田市美術館、ニューヨーク近代美術館(MoMA)やGINZA sixなどの設計で知られる世界的建築家・谷口吉生氏の初の自伝。「私の履歴書」(日本経済新聞社、2017年連載)全29回分の記事と作品写真を収録。「建築作品を通してのみ自身を表現する」ことを心がけ、建築理念や父・谷口吉郎との関係、自身の半生について、公に語ることの少なかった著者の肉声を集めた貴重な一冊です。自身の設計になる金沢の建築博物館「谷口吉郎・吉生記念金沢建築館」の開館を記念し出版。
内容(AMAZONより)
- 単行本(ソフトカバー): 136ページ
- 出版社: 淡交社 (2019/9/17)
- 言語: 日本語
- ISBN-10: 4473043495
- ISBN-13: 978-4473043498
- 発売日: 2019/9/17
4.まとめ
建築家 谷口吉生は、父である谷口吉郎とともに、日本の建築界に多大な影響を与えた建築家です。今回ご紹介した建築は代表作の一部ですが、どれもその空間体験はすばらしいものです。「モダニズムの思想」を「建築にする」とこんな雰囲気になるのだと、外観も細部も整っていて、お手本のようです。気の抜けた空間なんてありません。それが私にはちょっと厳しすぎるところもありますが。機会があったら、ぜひ行って見てください。