数学者が、建築をやるとどんな建築を作るんだろう?そういえば、コルビジェの弟子に音楽家クセナキスがいたっけ?しかも彼は数学もやっていたし。数学すごい!二つの専門が融合した建築ってどんな感じかな?


本記事の内容
建築家 篠原一男の代表作を紹介します。
建築家 篠原一男に関わる書籍を紹介します。
建築家 篠原一男の建築全作品リストを付けます。
篠原一男は、1925年生まれで戦後の住宅建築の大きな影響を与えたプロフェッサーアーキテクトですね。かっこいいですね!プロフェッサーとアーキテクトを両立していました。昔の東京物理学校、今の東京理科大学と東北大学で数学を専攻後、建築に転向します。数学と建築!これは、必然の出会いであったのでしょうね。この出会いは、日本の建築のその後にも大きな影響を与えていますよね。篠原一男は、東京工業大学の教授であった清家清の元で学んでいます。清家清は、吉阪隆正と同世代の建築家ですね。
建築をやっている人で、篠原一男を知らない人はいないです。知らなかったら、「おーーい!学校で何やってたんだ?!」ってことになります。篠原一男は、教育者としても非常に優れていました。その弟子を見てみるとよくわかります。坂本一成、白澤宏規、長谷川逸子などが篠原研出身です。あと、篠原スクールと言われる建築研究会で伊東豊雄も学んでいたそうです。私もとても尊敬する建築家の一人です。
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目次
1.建築家 篠原一男の略歴
静岡県で1925年生まれ。
東京物理学校(今の東京理科大学)を卒業して、東北大学で数学を専攻していた。その後に、東京工業大学で建築を学ぶ。清家清に師事する。
篠原の著作である「住宅論」「続住宅論」(後述)によると、篠原一男の建築様式は大きく4期に分けられる。第1の様式:1954~1969年 日本建築の伝統との対応の模索。第2の様式:1970~1974年 コンクリートの構成を用いた時期。第3の様式:1975~1983年 幾何学形態をモチーフにした時期。第4の様式:1984~2006年 最終型として都市の多様な形態を組み合わせた時期。
4つの時代様式その中で日本の伝統的な建築様式を徐々に抽象化しながら,近代の思想との融合をはかった。
主な建築作品としては、久我山の家 (1954) 、から傘の家 (1961) 、白の家 (1966) などがある。
2006年に亡くなりました。
2.建築家 篠原一男の代表作 紹介
白の家 (1966)

- 設計:篠原一男
- 竣工:1966年
- 場所:東京都杉並区
谷川さんの住宅 (1974)

- 設計:篠原一男
- 竣工:1974年
- 場所:群馬県長野原町
上原通の家 (1976)

- 設計:篠原一男
- 竣工:1976年
- 場所:渋谷区代々木上原
上原通りの住宅の内部動画があります!
3.建築家 篠原一男の書籍 紹介
私が読んだことのある3冊の本を紹介しますね。住宅論は、篠原一男の考え方が端的にわかる良書です。まずはこれが重要です。あと、多木浩二による篠原一男論です。こちらは、建築評論としておすすめです。最後に、図面集です。図面は建築家のテキストですよね。住宅論で書ききれなかった思想は、すべてこの図面の中に示されているので、それを読み取っていかなくてはいけません。何度読んでも面白い!
住宅論
内容: 非合理性を含めた人間の「生」の空間を追い、「美」をさぐり、「永遠性」を主張する著者の、「住宅は芸術である」、「三つの原空間」など、評判高い諸論文十数編をまとめたユニークな評論集。(Amazon内容紹介より引用)
建築家・篠原一男―幾何学的想像力
内容: 「住宅は芸術である」―。日本的伝統に立脚しつつ、幾何学的精神に満ちた美しい空間を探求し続けた神話的建築家・篠原一男。生きることの意味と美と永遠性が創出されたその住空間の魅力と理念を精緻に分析し、建築空間の可能性を切り拓いた意欲的クリティーク。「BOOK」データベースより
篠原一男住宅図面
内容: 目次
- 第1の様式(久我山の家;谷川さんの家;狛江の家;茅ヶ崎の家;から傘の家;大屋根の家;土間の家;原型住宅(1);原型住宅(2);花山北の家;朝倉さんの家;白の家;地の家;花山南の家;山城さんの家;鈴庄さんの家)
- 第2の様式(未完の家;篠さんの家;同相の谷;海の階段;空の矩形;久ヶ原の住宅;東玉川の住宅;成城の住宅;直角3角柱)
- 第3の様式(谷川さんの住宅;軽井沢旧道の住宅;糸島の住宅;上原通りの住宅;花山第3の住宅;愛鷹裾野の住宅;上原曲り道の住宅;花山第4の住宅;高圧線下の住宅;東玉川コンプレックス)
- 第4の様式(ハウスインヨコハマ;ハネギ・コンプレックス;テンメイ・ハウス)
- プロジェクト(後藤さんの住宅;同相の谷増築計画;未完の家増築計画;蓼科山地の初等幾何)
「BOOKデータベース」 より
4.建築家 篠原一男の建築 全作品リスト
建築作品名 | 竣工 | 所在地 | 備考 |
久我山の家 | 1954 | 東京都杉並区 | |
久我山の家 その2 | 1958 | 東京都杉並区 | |
谷川さんの家 | 1958 | 東京都杉並区 | |
狛江の家 | 1960 | 東京都狛江市 | |
茅ヶ崎の家 | 1960 | 神奈川県茅ケ崎市 | |
から傘の家 | 1961 | 東京都練馬区 | |
大屋根の家 | 1961 | 東京都大田区 | 現存せず |
城山の家 | 1961 | 福島県いわき市平 | |
土間の家 | 1963 | 長野県御代田町 | |
花山北の家 | 1965 | 神戸市長田区 | |
朝倉さんの家 | 1966 | 東京都渋谷区 | |
白の家 | 1966 | 東京都杉並区 | |
地の家 | 1966 | 東京都練馬区 | |
山城さんの家 | 1967 | 横浜市磯子区 | |
花山南の家 | 1968 | 神戸市長田区 | |
鈴庄さんの家 | 1968 | 神奈川県葉山町 | 現存せず |
未完の家 | 1970 | 東京都杉並区 | |
篠さんの家 | 1970 | 東京都練馬区 | |
直方体の森 | 1971 | 川崎市多摩区 | 現中村正義の美術館 |
同相の谷 | 1971 | 東京都大田区 | |
海の階段 | 1971 | 東京都練馬区 | |
空の矩形 | 1971 | 東京都世田谷区 | |
久ヶ原の住宅 | 1972 | 東京都大田区 | |
東玉川の住宅 | 1973 | 東京都世田谷区 | |
成城の住宅 | 1973 | 東京都世田谷区 | |
直角3角柱 | 1974 | 山梨県山中湖村 | |
谷川さんの住宅 | 1974 | 群馬県長野原町 | |
軽井沢旧道の住宅 | 1975 | 長野県軽井沢町 | |
糸島の住宅 | 1976 | 福岡県糸島郡志摩町 | |
上原通りの住宅 | 1976 | 東京都渋谷区 | |
花山第3の住宅 | 1977 | 兵庫県神戸市 | |
愛鷹裾野の住宅 | 1977 | 静岡県沼津市 | |
上原曲がり道の住宅 | 1978 | 東京都渋谷区 | |
花山第4の住宅 | 1980 | 兵庫県神戸市 | |
高圧線下の住宅 | 1981 | 東京都世田谷区 | |
日本浮世絵博物館 | 1982 | 長野県松本市 | |
東玉川コンプレックス | 1982 | 東京都世田谷区 | |
ハウス イン ヨコハマ | 1984 | 横浜市港北区 | 現存せず |
東京工業大学百年記念館 | 1987 | 東京都目黒区 | |
ハネギコンプレックス | 1988 | 東京都世田谷区 | 現存せず |
テンメイハウス | 1988 | 横浜市鶴見区 | |
花山の病院 | 1988 | 神戸市長田区 | |
K2ビルディング | 1990 | 大阪市都島区 | |
熊本北警察署 | 1990 | 熊本市中央区 | 現熊本中央警察署) |
5.最後に
篠原一男の建築は、世界的にも有名です。時代を超えて、しかも住宅を通してひとつの世界観を伝えています。オランダのレム・コールハースとの親交もあり、日本の様式の影響がどのようなものかしっかりと認識しながら、モダニズムの可能性を建築通して実践していたとも言えるのではないでしょうか。時々、見学会もあるようなので、建築に興味のある人は是非見に行ってくださいね。